山井 昭広(やまい あきひろ)

設計課 企画 遊びデザイナー

1977年生まれ。遊具の企画デザインを担当。屋外遊具だけでなく、屋内遊具、公 園全体の計画、遊び場のロゴ制作やサイン計画まで遊びに関わる全てのデザイン業務を行う。2児の父であり、休日はいろんな遊び場へ出かけ家族サービスをし ている。

遊びデザイナーのしごと

こんにちは、山井です。私は、遊びデザイナーという肩書で遊具の企画デザインをやっています。普 段は発注者から依頼を受けて、特注のオリジナル遊具を提案したりしていますが、大規模なものになると公園の全ての施設をコンセプトに沿って企画提案することもあります。

こども時代はどんな子でしたか?

海と川に囲まれた田舎の漁師町で育ちました。幼少期は本当にずっと友達と一緒に海や川で遊んでいました。夏が一番楽しかったですね。川では手掴みで魚を捕まえて、浅瀬にみんなそれぞれ石で「いけす」 を作って、そこで魚を泳がせるんです。いけすのコースをたくさん作って、魚が進んでいくのを見て楽しんでました。
きっとそういう遊びが創造力を鍛えることにつながったような気がします。

また海では、子どもが4~5人ぐらい乗れる大きなサイズの発泡スチロールの空き箱を拾って、ボー トのように乗って冒険に出てました。今思えば、かなり危険な行為ですが、昔は大丈夫でした。

冬は火遊びですね。よく浜辺で大人がゴミを燃やしてたので、大人がいなくなったら残った火で流木やゴミを燃やして遊んでました。当時はとてもお腹がすいてたので、干潟で貝を拾ってきて焼 いて食べてましたね。そんな幼少期を過ごしていました。

遊具をデザインする時のポイントは?

お客様と直接お話をして、遊び場に対する思いをヒアリングしたり、実際に現地やその周辺の街を客 観的に観察して歩きます。そこで感じたことや気づいたことを遊具のデザインに活かすように心がけています。

たとえば、ある町では現地の公園周辺で見た蓮の花がとても美しかったので、童話の「おやゆび姫」 に登場する「蓮の花」をテーマにした遊具をデザインしました。最近では、インターネットで検索するといろんな情報を入手できますが、現地に行かないと気づくことができないこともたくさんあります。

また、お客様のヒアリングもとても大切にしています。ある大手商業施設が運営する公園を計画した際、 私は「お菓子の国」を公園のデザインテーマにしました。これは、お客様とのヒアリングの中で、商業施設のターゲット利用者が近隣の子育てファミリー層ということが分かっていたので、小さな子ど も達に愛される「お菓子の国」というデザインテーマがマッチしました。

またお菓子みたいなキュートなデザインは認知性(覚えやすさ)が良いので、SNSなど口コミを通じてお母さん達の間で自然に広がって、いつも公園は多くの利用者で賑わっています。
お客様とできるだけ直接お話をすることで、どのような遊び場にしたいかを共有し、多くの人が満足 する遊び場づくりにつなげています。

運動不足になっている現代の子ども達に対策は?

私は毎日現代の子ども達の運動不足の現状を目にしています。小学2年生の息子が学校から帰ると、 いつも数人の友達が家に集まってゲームを夢中でやっています。
公園でも子ども達は遊具で体を動かして遊ぶのではなく、遊具の上でゲームをしていることもしばしば見かけます。

そんな中、社会問題になりつつある子ども達の運動不足を解消するべく、2012年に文部科学省が「幼児期運動指針」を発行しました。体育の授業もこの指針をもとにプログラムされているそうです。
この指針にある、「多様な動きが経験できるようにいろんな遊びを行うこと」が子ども達の成長にとても大切です。登る、はう、滑る、ぶら下がる、持つ、こぐ、などいろんな動きを獲得することが将来的にスポーツの習得に役立ちますし、大人になって生活するための動きやとっさの時に身を守る動 きができるようになっていきます。

私は遊具のアイテム構成を考える際、一つでもたくさんの動きを獲得できるように考え抜きます。子ども達の成長にとって大切なこの時期に遊具でもっと遊んでもらえるよう、魅力的な遊具をデザインすることが、私たち遊具屋の大きな責任だと思っています。

安全な遊具づくりで気を付けていることは?

私には2人の息子がいるんですが、長男が生まれた8年前ぐらいから私の遊具の安全に対する考え方 が、大きく変化したと思います。もちろんそれまでも公園で遊ぶ子ども達の動きを観察したり、細心の注意を払いながら遊具の設計に携わっていました。ただ、今思い返してみるとその頃の私は、安全 規準に準じた「作業的な意識」しかなかったと感じます。

しかし今では、実際に息子と一緒に公園の遊具で遊ぶようになって初めて、子どもがよくやりがちな 怪我や、大人が予想もしない遊び方による突発的な危険など、多くの種類の危険を身をもって経験するようになりました。
この経験の積み重ねが、遊具をデザインする上でとても役立っています。以前より細かい部分まで安 全対策について工夫することができるようになりました。遊具をつくる者として、この子どもから与えられた経験ができた事は、かけがえのない財産です。

私は、遊具を利用する子どもの1人の保護者として、安全で楽しい遊具をもっと世界に増やしていきたいと思っています。